名古屋地方裁判所 昭和24年(行)20号 判決
原告 竹内竹四郎
被告 岡崎税務署長
一、主 文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は請求の趣旨として被告が原告の昭和二十三年度分所得金額を金五十五万円と認定した更正決定は之を取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、其の請求の原因として原告は瓦の製造販売を業とするものであるが、被告は原告の昭和二十三年度分所得金額を二十四万円、之に対する所得税額を八万五千百円と決定して昭和二十三年九月二十日其の旨原告に通告した。次いで被告は昭和二十四年二月二十七日附を以て昭和二十三年度分原告の所得金額を金五十五万円と更正決定を為し之を原告に通告した。右更正決定に対して原告は不服であつたから昭和二十四年三月十日名古屋財務局長に審査の請求をなしたが未だ右審査請求に対する決定通知がないに拘らず、被告は原告に対する強制執行によりて金三十五万千七百八十九円三十五銭の徴税を遂げた。然れども原告の昭和二十三年度の所得金額は五十五万円ではなく、三十一万千八百五十円である。即ち昭和二十三年度中原告が生産販売した瓦の総数は鏝十江戸、細丸、唐草等を目板に換算し目板と合して総計十三万八千六百枚である。而して生産原価は一枚に付き金十円七十五銭であり販売価格は一枚に付き平均十三円であるから利益は一枚に付き二円二十五銭であり之に前記総生産販売枚数を乗じた三十一万千八百五十円が原告の純利益金額即ち所得金額である。右生産原価は西加茂郡瓦工業協同組合の標準によつたもので之を詳述すれば左の通りである。
壱窯に付き千枚焼上の生産原価
粘土 一、五〇〇円(千枚に付き)
燃料 五、五二〇円 〃
仕上工賃 一、二〇〇円 〃
仕上仕損費 一〇〇円 〃
修繕費 二〇〇円 〃
動力費 一〇〇円 〃
窯の工賃 一、二五〇円 〃
組合費 八〇円 〃
消耗費 四〇〇円 〃
償却費 三〇〇円 〃
雑費 一〇〇円 〃
合計 一〇、七五〇円 〃
即ち千枚に付き一万七百五十円、一枚に付十円七十五銭である。被告税務署の細谷税務官吏は昭和二十四年一月頃原告方に来て工員請負帳其の他の帳簿を探査した結果其の去るに臨んで原告の所属する西加茂郡瓦工業協同組合理事長森川次郎及同税務係都筑国松立会の席上に於て原告の昭和二十三年度分瓦生産数は十三万六千枚で所得金額は三十万六千円であると確認しながら、前記の如く五十五万円と更正決定をしたものであつて不当も甚だしきものである。昭和二十四年六月十日細谷税務官吏は原告方に臨み、右更正決定承認の署名捺印を強要したが原告は貴官自ら厳密調査をした結果三十万六千円であることを認定言明して置き乍ら、五十五万の更正決定は不当であり且他の同業者と比較するに余りに過大であるから承諾し難き旨述べて署名捺印を拒絶したのである。次に被告の主張する第一乃至第四表原告の所得の計算に付き検討するに、(一)被告が原告の瓦生産数量を十八万枚と計算したのは根拠がない。被告は山本信三の覚帳を調べて前記の如く十三万六千枚と認定したのであつて今に至つて右覚帳によつて生産数量が十八万枚なりと主張するのは理解に苦しむ。(二)販売価格を瓦一枚十六円なりと主張するのも亦全く根拠がない。販売価格は瓦一枚昭和二十三年六月初頃迄は<公>九円四十銭以下の七円五十銭位であり、六月中旬及下旬頃が最も高価で十五円位になり其の後九月十四日<公>価格十三円十五銭となつたが実際の販売は十二円位であつた。
被告は其の主張を維持せんが為に原告から買受けた者を探し廻つて特別品の高価なものを買受けた若干の買受人の価格を計算の基礎にして居るが原告が之等の者に販売した瓦は何れも「新みがき」と称する特別上等品で一般家庭に於て使用する品ではない、大部分は甲第九乃至十二号証に見る如く六円乃至十円位で販売して居るのである。瓦には一等品、二等品、三等品あり種類にも棧瓦(目板)、饅頭瓦等色々であるが原告は、原告の所属する前記組合の原価計算によりて一枚の平均価格は十三円なりと主張するのである。(三)被告は窯焼中に生ずる木炭を利益として計上して居るが之は所謂「けしずみ」と称するもので工員達の暖を取る為に消費されて仕舞うものであつて収入として計上すべきものではない。(四)生産費の計算に於て被告は粘土に付き原告は自己所有地より之を掘取つて居ると主張して標準経費より割引をして居るが、原告は昭和二十三年中は共同採掘場から掘取つて居るのであつて自己所有地から掘取つたことはない。故に被告の割引計算は失当である。(五)被告は工賃の計算に於て原告には自家労力ありと主張して多額の差引をして居るが、之亦全く理由のないことで原告の長男は戦死し二人の女子あるに過ぎず、一人は岡崎病院に勤務し、一人は中学生である。原告自身は昭和二十三年度中西加茂郡瓦工業協同組合理事長を勤め、其の事務に専従して居たので自家労力を計上差引くべき余地はない。(六)電力費用の計算に於て被告は一窯十キロと計算して居るが之も失当である。原告工場は土錬機、荒地出機、紛はたき機、水吸ポンプ等が同時に動くことになつて居りシヤフトも九間に達する長尺ものであるから、一窯千枚製造には実際は十七、八キロを要するのであるが、前記組合の製造業者の平均使用量に準じて一窯十五キロと計算した金額を動力費としたのである。(七)燃料費の計算に於て被告は原告の自家採取を理由として割引計算をして居るが之も失当である。燃料は山林を買受けて人を雇つて伐採し自家生産をすると単に買入れるよりも高価になるので一般に中止されて居る状況である。(八)燃料山毛上採取による収入は原告には更にない。原告は森末吉と共同で立木を買入れたことはない。原告は薪の必要から森末吉が山林を買入れるに当つて金を貸したことがあるに過ぎぬもので共同経営ではないから利益の分配はない。三栄工業株式会社に対する素材の売買契約書に原告が森末吉と共に共同売渡人として署名捺印したのは森末吉が同会社に面識なく信用もないのに同会社から前渡金を貰う必要があつたので、同会社の要望によつて原告は保証人の意味で署名捺印したのであつて、共同売渡人であつたのではない。況や森末吉は其の山材伐採経営の全部に付き所得の全部に対し課税を受け之を完納して居るのである。今更被告が其の半分は原告の収益であると主張する理由の理解に苦しむ、最後に被告が原告の昭和二十三年中に於ける資産の増加を主張するは理由がない。新築家屋の木材、其の他の材料は昭和二十一年中に自家製の瓦と交換して貯蔵して置いた手持品である。買受けたと指摘される山林は、昭和二十一年七月及昭和二十二年三月坪当り六円で買受けたところが、昭和二十四年坪当り八十銭を以て国営開墾用地として強制買上げに遭ひ、原告は大損害を蒙つたのである。以上の如く被告の為したる更正決定は不当であるから之が取消を求むる為本訴請求に及ぶと陳述した。(立証省略)
被告は原告の請求を棄却する、訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として被告が原告の昭和二十三年度分所得金額を五十五万円と認定したのは各種の関係資料を蒐集し之に基いて調査の結果所得金額五十五万円と更正決定をしたものであつて此の金額は正当である。之を詳述するに原告の昭和二十三年度中に於ける瓦の製造販売に於ける総収入金額は別紙第一表記載の如く二百八十九万八千円であり、総支出金額は別紙第二表記載の如く百七十一万五千百五十九円であり、其の差引純利益は別紙第三表記載の如く百十八万二千八百四十一円である。次に原告には同年度中別紙第四表に示すが如き燃料山の毛上採取販売による純利益十万七百十一円五十銭がある。従つて原告の純利益の総計は百二十八万三千五百五十二円五十銭である。仍て被告が右利益金額以下に於て、原告の所得額を五十五万円と認定したのは決して不当ではないのである。元来所得金額の調査に付ては直接調査をする場合と間接調査による場合とがある。直接納税者について実額調査を行うのが最も良いのであるが納税者に記帳の無い場合或は記帳不備で所得の実額を捕捉することが困難な場合には資料其の他間接調査によつて之を補うのである。原告の場合には実地調査によつて実額の捕捉が出来なかつたので資料並間接調査により所得税法の規定に従い、更正決定をしたのである。然るに原告は更正決定額は不当であると審査請求をしたので、被告は原告宅に臨み調査した処、原告の使用人山本信三の製造覚帳(同人作成の工賃計算上の覚帳乙第七号証)があつたので之によつて製造高の一部は調査出来たが其の他は不明であつた。其の後更に臨宅して機械其の他の固定資産の調査をしたが、其の際先に提示した帳簿類は焼却して現在はないと陳述し審査に付ては一切税務代理士酒井俊雄に一任してあるからと言つて原告は答弁を避けたので被告は己むなく間接調査の方法を執るに至つたのである。以下逐次被告の調査の結果を説明すれば、
(イ) 第一表瓦製造数量の認定
職工山本信三の製造覚帳には棧瓦一一八、六六三枚、饅頭一一、一〇三枚、熨斗二五、七三四枚、江戸三、五〇五枚、七寸(小)三八九枚、合計一五九、三九四枚なる製造数量がある。之を棧瓦(目板)に全部換算すると一八三、八一八枚になる。右山本信三の記帳には九月、十一月、十二月の三ケ月分の記帳が洩れて居る。然し右三ケ月の間も電力使用状況より見て製造のあつたことは明かである。又袖、角、大巴等の記帳は全然ないが之等の特殊の瓦は山本信三以外の職人が製作して居る為であると推察せられる。更に原告方の使用電力量を中部配電株式会社挙母出張所に於て調査したところ、年間使用量は一、九七九キロ(但し十二月分は定額支払なるにより従量キロに換算乙第八号証)である。十キロ当りの製造量を千二百枚乃至千三百枚にすると優に十九万枚を超ゆる瓦を製造していたことが推計される。右の如く製造数量は山本信三の覚帳の示す数字を相当超ゆるものであることは明かであるが、破損等を考慮して前記棧瓦に平均した一八三、八一八枚の範囲内に於て少くとも一八〇、〇〇〇枚の製造販売ありと認定した次第である。
(ロ) 第一表販売価格の認定
原告は記帳を具へないので已むなく売先に付て調査した、棧瓦(目板)に換算して一枚平均十六円を下ることはないと認められたのである(乙第一号証乃至同第六号証各買受人に付き調査した聞取書)。
(ハ) 第一表雑収入金の認定
瓦を焼上げるとき窯の中で木炭が出来る。之を一窯当り百円の木炭が出来るものと推定した、年間一八〇、〇〇〇枚、一窯一、〇〇〇枚、一八〇窯の割で一八、〇〇〇円と推定した。
(ニ) 第二表製造総支出の認定
原料粘土は西加茂郡瓦工業協同組合原価計算によれば、瓦一、〇〇〇枚当り一、五〇〇円となつて居るが之は工場着粘土代であり、原告は工場附近自己所有地より人夫に掘らせて居るので運賃其の他の経費は普通より割安であるから一、〇〇〇枚当り一、三五〇円と認定した。燃料は前記組合原価計算は五、五二〇円であるが、原告は後述第四表に於て説明する如く山林を買ひ其の採取した薪を自己の瓦製造の燃料にして居り、右自己消費以外の分を売却して利益を得て居るので実際は相当割安になる筈であるが、一応共同伐採者森末吉との共同計算の際の単価によつて一窯当り一、〇〇〇枚に付き五、二〇〇円と認定した。
工賃は、組合原価計算の工賃は一、〇〇〇枚当り二、四五〇円であるから一八〇、〇〇〇枚分は四四一、〇〇〇円になるのであるが、原告方の自家労力を一二六、〇〇〇円と見て之を控除した三一五、〇〇〇円を認定したのである。仕上損、修繕費、消耗費、雑費は夫々組合原価計算の標準によつた。
公課公租は夫々賦課当事者に付て調査したところを集計したものであり減価償却費は原告臨宅の際陳述があつた固定資産取得原価によつて計算した。
営業費は旅費、販売費等を毎月二千円と見て年間二万四千円と認定した。
動力費は中部配電挙母営業所の帳簿によつて調査した(乙第八号同営業所の回答書)。
(ホ) 第四表燃料山毛上採取販売純利益の認定に付て
原告は訴外森末吉と共同で東加茂郡阿摺村中立山及同郡石野村野口山等の山林の立木を買受け之を伐採し、素材、薪材を生産販売し、其の二分の一の利益を収めて居るものであるが、原告は之を全然申告しないので共同経営者森末吉及素材、薪材の買受人等について調査した。
尚被告は原告の所得が被告主張の如きものであることを支持すべき資料として、左の事項を主張する。(一)原告の課税状態を見るに昭和二十一年分増加所得申告なし、決定所得額六七、五〇〇円、昭和二十二年分確定申告なし、更正決定額一四四、〇〇〇円、昭和二十三年分確定申告額二八八、〇〇〇円、更正決定額五五〇、〇〇〇円である。(二)原告の昭和二十三年中の営業状態は挙母町同業者二十名中第一位に在るものと組合に於ても認めて居るものである。設備に於て窯二基、動力五馬力、使用人常時八名内外で、其の製品は他の業者に比し優秀であり、従つて販売価格も常に高価であつて所得金額が同業者中第一位に在ることは組合並一般の認めるとろである。(三)原告の昭和二十一年三月三日現在財産申告は家族分も合算して一一九、六三八円であるが、昭和二十三年に著しく増大して居る、即ち(四)昭和二十三年中に見る原告の資産の増加状況は(イ)同年中の預金状況に於ても払出金総額二八〇、〇〇〇円、預入金総額四七一、五八一円六一銭であり(東海銀行挙母支店よりの回答)(ロ)不動産に於て原告は昭和二十三年五月に木造瓦葺平家建居宅建坪三十四坪二合、木造瓦葺平家建居宅建坪五坪七合、木造瓦葺平家建炊事場建坪九坪九合、木造瓦葺平家建便所建坪一坪三合、木造瓦葺平家建居宅建坪十二坪五合、合計六十一坪六合の建物を増築していることは、西加茂郡挙母町長の証明によつて明かであり、更に土地に付て調査すれば、昭和二十三年三月十八日及同年十二月十日の二回に山林一反五畝、同二反五畝十四歩、同一反七畝、合計五反七畝十四歩を売買によつて取得して居り、右の家屋並土地を当時の経済状態に於ける価格で換算すれば、家屋は約六十万円(坪当り一万円)土地は約十万円(坪当り六十円)である。右の如く不動産による増加のみを見ても原告の資産は昭和二十三年中に於て約七十万円の増加ありと見ざるを得ないのである。之は原告の一ケ年の生活費の一切を支弁した余剰の累積と見ることが出来るのであつて、此の観点よりするも原告の所得金額を五十五万円と見ることは決して不当ではないのであると述べた。(立証省略)
三、理 由
乙第七号証職工山本信三の瓦製造覚帳及乙第八号証中部配電株式会社挙母出張所長の電力消費量回答書は原告の営業上の帳簿の提出を見ざる本件に於ては、原告の瓦製造数量を判断する上に於て重要なる価値を有するものと認めざるを得ない。蓋し乙第八号証は電力メーターの機械的記録を基礎とするものであるから疑を挾む余地なかるべく、乙第七号証は記載の態様は完備せるものと謂うを得ないが証人細谷孝、山本信三の証言及同人等の証言によりて真正なる成立を認め得べき、乙第六号証によれば乙第七号証覚帳は原告方の職工山本信三が工賃覚の為に同人が製作に関係した数量を記載して置いたものを大蔵事務官細谷孝が原告方へ調査に赴いた際原告立会の下に写し取つたものであるから其の記載数量のものだけは製造されたことは明かである。而して其の記載によれば、被告が第一表及其の説明に於て主張する如く各種類の瓦一五九、三九四枚であり、従つて其の各種の瓦の数に応じて棧瓦(目板)に換算した数量が一八三、八一八枚に達すると謂う被告の認定は正当である。尚電力使用状況より見て乙第八号証に示す動力使用料は千九百キロを超ゆるものであることは明かであり、且前記乙第六号証及証人山本信三の証言によれば、一窯千枚分に要する電力は略十キロ弱であるから、被告が第一表及其の説明に於て主張する如く原告の製造数量は優に十九万枚を超ゆるものと謂うのも亦正当である。結局以上の資料に徴して被告が原告の製造数量を目板に換算して十八万枚と認定したのは正当と謂うべきである。次に生産費に付て原告の主張に於て、目板千枚に付き一万七百五十円であり、被告の主張に於て目板千枚に付き九千五百二十八円六十銭であつて争の生ずる所以は原料粘土、燃料、工賃、電力等の支出に付て原告は西加茂郡瓦工業協同組合の原価計算標準による主張を為すに対し、被告は原告個有の営業状態より推計して右の原価計算標準より若干の控除を為した額を主張する点に存するもので被告の主張するところ相当の根拠があるを見るも如何なる率によりて控除すべきか困難であるから、証人森川次郎の証言によりて知り得べき前記組合の原価計算標準を基礎として(但し動力費に付ては前記乙第八号証に年間動力使用料金の明確なる記載があるから之に拠り、公訴公課は乙第十一号証、乙第十二号証の一、二による)生産費総支出を左の如く認定するを相当とする。
粘土 千枚に付き 一、五〇〇円 十八万枚に付き 二七〇、〇〇〇円
燃料 〃 三、五二〇円 〃 九九三、六〇〇円
工賃(仕上及窯を含む)〃 二、四五〇円 〃 四四一、〇〇〇円
仕上損 〃 一〇〇円 〃 一八、〇〇〇円
修繕費 〃 二〇〇円 〃 三六、〇〇〇円
消耗費 〃 四〇〇円 〃 七二、〇〇〇円
雑費 〃 一〇〇円 〃 一八、〇〇〇円
動力費 〃 〃 一一、〇一五円
公課公租 〃 〃 三三、八七二円
償却費 〃 三〇〇円 〃 五四、〇〇〇円
合計 十八万枚分 一、九四七、四八七円
次に十八万枚の瓦が如何なる価格を以て販売せられたりやの点である。此の点に付き(一)証人森川次郎の証言は西加茂郡瓦工業協同組合の昭和二十三年の瓦目板一枚の平均基準価格は十三円であるが業者は夫々個人売買をやつて居るので各人により実際の販売価格は異るものであり、同年中の販売価格は瓦一枚年初めに於て一等品で七円五十銭前後、六月頃値上りで十五円となり、八月には値下りで十円乃至十二円、其の後は十二円以下であつたと謂い(二)証人深谷十三男の証言及乙第一号証によれば、同人が昭和二十三年九月頃原告から買受けの契約をした瓦の単価は目板一枚十八円五十銭であり、(三)証人小島[金乍]一の証言及乙第二号証によれば、同人が昭和二十三年二月頃原告から買受の契約をした瓦の単価は目板一枚十五円であり、(四)証人深津[金小]一郎の証言及乙第三号証によれば、同人が昭和二十三年二月頃原告から買受の契約をした瓦の単価は目板一枚十六円であり、(五)証人柴田新一の証言及乙第四号証によれば、同人が昭和二十三年三月頃原告から買受の契約をした瓦目板一、五一六枚、饅頭一三二枚、熨斗二六八枚、袖四八枚、江戸六七枚、角五枚、大巴二枚、鬼二枚の総代価は三四、八〇〇円であり(右代価を単に瓦の総数で除した結果は十七円五銭になる)(六)証人永田丈吉の証言及乙第五号証によれば同人が昭和二十三年八月頃原告から買受の契約をした瓦単価は目板一枚十七円の一般相場により(七)証人山本信三の証言及乙第六号証によれば、昭和二十三年中の売値は一枚最高二十円位、最低十四円位、平均十六円位であり、(八)甲第九号証によれば挙母製材株式会社が昭和二十三年四月原告より買受けた瓦の単価は目板一枚七円十銭乃至七円八十銭であり、(九)証人奥村鈴市の証言及甲第十号証によれば、同人が昭和二十三年一月原告から買受けた瓦の単価は目板一枚六円三十銭であり、(一〇)甲第十一号証によれば牧野伊三郎が昭和二十三年三月原告から買受けた瓦の単価は目板一枚七円八十銭であり、(一一)証人神谷利三の証言及甲第十二号証によれば同人が昭和二十三年二月原告から買受けた瓦の単価は目板一枚五円七十銭であるから以上を綜合すれば、前記組合の原価計算による目板一枚平均単価十三円なるものは実際の販売に於ては準拠されなかつたものであることは明かであり、其の実取引に於ける年間を通ずる平均単価は目板一枚十四円乃至十六円の間に在つたものと認めるのが相当である。今原告に最も有利に平均単価一枚十四円とするときは、其の十八万枚の価格は二百五十二万円であり、之より前記総支出百九十四万七千四百八十七円を控除するときは五十七万二千五百十三円の純利益を得べく、一枚十六円とするときは、其の十八万枚の価格は二百八十八万円であり之より前記総支出百九十四万七千四百八十七円を控除して九十三万二千五百十三円の純利益を得た結果になる。何れにするも原告の所得を本件更正決定の五十五万円以下に見るを得ないから原告の本訴訟は理由がない。尚被告は瓦の製造過程に生ずる木炭による利益、訴外森末吉との共同経営に係る燃料山毛上採取販売による利益を主張し、各種の証拠を提出して居るが原告の所得は前説示の如く瓦製造販売のみによりても優に更正決定書五十五万円を蔽うものであつて、右に対する判断を必要としないから之を省略する。仍て訴訟費用の負担に付き民事訴訟法第八十九号を適用し主文の如く判決する。
(裁判官 県宏)
(別表省略)